熊野筆の作り方(その4 最終回)

台仕事で作られた穂首を完成品に仕上げていきます。

10.繰り込み

繰り込みは軸に穂首をつけて完成品にする工程です。軸は、竹や桜の木等から作られています。繰り込み台の上で筆の軸を回転させ、穂首が入りやすいサイズになるように軸の内側を均等に削ります。その後接着剤で穂首を軸に接着します。

11.仕上げ

穂首を糊固めをして形を整える工程を仕上げと呼びます。穂首の寿命を保つためにも大切な工程です。ガラス板の上に布海苔を置き、穂首をガラス板に叩き付けるようにして布海苔を穂首全体にそして根元まで充分に含ませます。不必要な布海苔は、糸かけで取り除きます。糸かけは麻糸を穂首に巻きつけて、軸を回しながら布海苔をしぼり取ります。この作業により穂首が綺麗な円錐状になります。

12.銘彫刻(めいちょうこく)

仕上げした筆を軒下や室内で充分に自然乾燥させます。十分に乾燥した筆の軸に、工房や筆の名前が彫刻刀で刻まれていきます。彫った部分に色を入れて完成です。



熊野筆の作り方(その1)


熊野筆の作り方は、大きく12の工程に分けることができます。

1.選毛(せんもう)・毛組み(けぐみ)
2.火熄斗(ひのし)・毛揉み(けもみ)
3.毛そろえ
4.逆毛とり、すれ毛とり
5.寸切り(すんぎり)
ここまでの工程をまとめて下仕事と呼びます。

6. 練り混ぜ(ねりまぜ)
7. 芯立て(しんたて)
8. 衣毛巻き(ころもげまき)
9. 糸締め(いとじめ)
これらの工程をまとめて台仕事と呼びます。

10. くり込み(くりこみ)
11. 仕上げ
12. 銘彫刻(めいちょうこく)
これらの工程をまとめて仕上げと呼びます。

熊野筆の製造工程で最も大切なのは、材料の原毛を選び仕分けして、作成する筆の性質に応じて混ぜ合わせる工程です。
熊野の筆作りの職人は、永年鍛え抜いた目と指先の感触を頼りに、一本一本丹念に仕上げていきます。

次回は一つ一つの工程について説明させて頂きます。


熊野筆ってなぁに?


「熊野筆」は、下記(1)、(2)の規程により製造された毛筆、画筆、化粧筆、刷筆とします。(注:熊野筆は、標準文字商標のため様々な字体があります。)

(1)経済産業大臣指定伝統的工芸品熊野筆
1. 技術・技法
   火のし、毛もみには、籾殻の灰を用いること。
   寸切りには、寸木及びはさみを用いること。
   混毛は、練りまぜ(盆まぜをした後、練りまぜをする場合を含む)によること。
   糸締めには、麻糸を使用すること。
2. 原材料
   穂首は、ヤギ、ウマ、シカ、タヌキ、イタチ若しくはネコの毛又は、これらと同等の材質を有する獣毛とすること。
   軸の素材は、竹又は木とすること。
3. 製造される地域
   広島県安芸郡熊野町
(この規定では100年以上の期間上記の製法で作り続けられた筆になりますので、実質的には書道筆と水墨画筆だけが対象になります。)

(2) 上記指定外の筆類
   筆において一番大切な機能部分であり命の部分は、穂首であり、この穂首を熊野で製造することを以って熊野筆とします。
   使用する原毛は、獣毛、化繊毛、植物繊維、羽根、胎毛等とします。
   熊野筆の製造事業所は、熊野町内とします。但し外注先は、熊野町及びその周辺地域とします。
   以上を基本とする下記の書筆、日本画筆、洋画筆、化粧筆、刷毛を熊野筆とします。

熊野筆事業協同組合は、平成16年12月に「熊野筆」という団体商標登録を取得しました。
これにもとづき、「熊野筆」(毛筆・画筆・化粧筆)の統一ブランドマーク(通称「Kマーク」)を制作しました。
「Kマーク」の意味するところは、KUMANOFUDEのKであり、3本の線は書(黒)・化粧(赤)・画(黄)の世界を表し、動きは協同と成長を意味しています。

製品の統一ブランドマークを表示することで、熊野製の筆であることが消費者にわかりやすく知らせることができるとともに、他製品との差別化を図ることを目的としています。さらに、現在まで熊野地域(広島県熊野町)で培ってきた技術力・品質・信頼性などをもとに、製造業者が一致団結して、より一層すぐれた筆づくりを行うことを目的としています。
これらの活動を通じて、より強固な地域ブランドを確立し、広島発!世界へ発信する「熊野筆」として飛躍していきます。

熊野町内で製造されている『熊野筆』にはブランドマーク証紙(「Kマーク」シール)が貼付されています。
『証紙番号』により生産者、生産履歴など確認することが出来ます。

【熊野筆に関するお問い合わせ先】
 熊野筆事業協同組合 
    広島県安芸郡熊野町3566番地2(Tel 082-854-0074)