熊野筆の作り方(その3)

次に台仕事では、下仕事で整えられた良質の毛の塊(くれ)を穂首に仕上げていきます。

6. 練り混ぜ(ねりまぜ)

練り混ぜは、毛を水に浸し、各種の毛を混ぜ合わせていくにあたり、毛組みが均一にむらなく混ざるようにする作業です。塊(くれ)を分解し、毛をうすく広く伸ばし、幾度も折り返してはうすく伸ばして、各種の毛を混ぜ合わせます。その間に逆毛やすれ毛などを取り除きながら、何度も櫛を通して質の良い毛を揃えていきます。吟味された質の良い毛は、うすく溶かした布海苔(ふのり)で固めて、平目にまとめます。

7. 芯立て(しんたて)

芯立ては、練り混ぜした平目を穂首1本分の大きさに分け、穂首の形を作って行く工程です。平目から割った毛を駒(こま)と呼ばれる芯立て筒に通して穂首の径を確定して、穂首の形を作っていきます。手の感触を頼りに、不必要な毛を抜き取ります。

8. 衣毛巻き(ころもげまき)

穂首の芯の周りに巻きつけられる毛を衣毛(ころもけ)といいます。上毛ともいます。衣毛には通常芯に使われるものより上質なものが使われます。衣毛に使われる毛も、芯になる毛と同様に、練り混ぜ、平目という同じ工程を経て整えていきます。

芯に一重に巻き付けるだけの量の衣毛の毛をとり、万遍なく巻く衣毛を巻きます。万遍なく薄く一重に衣毛を巻く作業は特に高度な技術と経験が必要です。綺麗に衣毛が巻かれた穂首は、一日または二日間自然乾燥させます。

9. 糸締め(いとじめ)

乾燥した穂首の根元を麻糸でくくります。麻糸は強度が強く、伸縮性がなく、濡れるとさらに強度が増しますので、麻糸を濡らしながら使います。糸の結び目の下の方の毛の根元に焼きこてをあて、焼き固めると穂首の完成です。