獣毛

熊野筆一本の穂首には種類も長さも異なる10種類以上の動物の毛が使われます。
それぞれの筆ごとに穂首の作り方、毛の種類と長さの配合があり、そのレシピは当社独自のものであり企業秘密です。筆の個性を創り出すレシピに合わせ、毛を均一に混ぜる「練り混ぜ」作業を熊野筆の職人は繰り返し行います。

筆の穂先に使われる主な毛を紹介します。ここに紹介する動物の毛以外にも様々な毛を使って熊野筆が作られます。そして、これらの動物の毛の殆どは外国から輸入しています。

山羊

この毛は、衣類などに使われる「羊毛」ではなく、中国の江南地方に棲息する山羊(やまひつじ)の毛で、通常の山羊と区別するために、山羊毛(さんようもう)とも呼ばれます。
体のどの部分の毛も、それぞれに異なる特徴があり、筆の原料として使用されています。 特に、両前足の間(胸)から首、喉にかけての毛は、「細光鋒」「粗光鋒」と呼ばれ先の透明に見える部分が長いほど良質な毛として、羊毛筆には欠かせないものです。他の部分の毛も太筆・細筆を問わず筆の原料として使われています。

馬

馬は、栗毛・白毛・青毛の三種類の毛色があり、体の殆どの部分が、筆の原料として使われます。 特に、尾脇毛と呼ばれる尻尾の付け根に生えている毛は、弾力があり、毛先が鋭く尖っていて、剛亳筆や兼毛筆によく使われます。中でも白馬の尾脇毛は良質です。
胴の毛は、柔らかく光沢があって、先が細く滑らかですので、太筆の衣毛、細筆の芯や衣毛に使われます。栗毛馬の腹の毛は、薄茶色で柔らかく、腹毛と呼んで衣毛に使われますし、尻尾や鬣(たてがみ)は、太筆の根元に力毛として使います。
この毛の場合、北アメリカ・カナダ産のものが、品質が良く、安定しています。

狸

毛先が鋭く弾力があり、毛が長いことから、主に太筆の命毛として使われます。
特に白色の毛は「白狸」と呼んで、量も少なく特に珍重されます。

鹿

毛は太くて硬く、先は鋭く尖っています。毛の根元が空洞になっていて、墨の含みがよいのが特徴です。弾力は強いのですが、まとまりに欠けますので、穂の根元に力毛として使います。夏に取った毛を夏毛、冬に取った毛を冬毛と呼びます。
また、下腹部、内股の毛は「白真」(しらじん)と呼ばれる逸品です。

鼬

鼬毛は尻尾の毛だけを使います。 毛先が細く弾力が強いので、毛質はすこぶる良好です。中国の北部からモンゴル、更にロシアなど、寒い地域に棲息するものほど毛質が良好です。
特にコリンスキーと呼ばれるロシア産のものは、毛が長く弾力もあって、高級品として珍重されています。

麝香猫

毛の長さが短いので、細筆だけしか使えません。毛先はとても鋭く、弾力が強いのが特徴です。柔らかい毛と混ぜ合わせることで、力毛として使います。

兎

兎の毛には、紫亳と呼ばれる先が黒色の毛と、野兎の毛の2種類があります。 いずれも、先が鋭く尖って弾力があり、細筆の命毛に使います。

猫

この毛は通常玉毛(たまけ)と呼ばれ、点付筆・面相筆や細筆に使います。細い線を書く筆に使います。
玉毛と呼ぶ理由は、毛の先端に近い部分が球状になっていることから、このように呼ばれています。一般に白色の毛を「白玉」茶色の毛を「茶玉」と呼ばれています。

灰リス

リス毛は、主に最高級の化粧ブラシに使用します。フェイス用など比較的大きな穂先にボリュームたっぷり使うことで、特別な肌触りでメークアップをフィニッシュすることができます。